第8回「何も足さない、何も引かない。」その2
そのままのサイズで展示をするとして、次に考えたのは、
オリジナルの写真、つまり、カメラからじ〜っと出てきたあのフィルムを、 原版のまま直接展示するかどうか、ということでした。 あのフィルム、皆さんも経験があるかとは思いますが、 薬品が漏れ出て来たり、時間が立つと色が褪せたりしてしまいますよね。 特に、夏場は非常にフィルムの管理も、撮影した写真の管理も、 難しいんです。 『半径2km』写真展は6月から7月にかけての開催だったから、 それも悩みの種でした。 壁に写真を貼るにしても、それぞれ1枚しかない原版をピンで刺すなんて 絶対にしたくなかったし、テープ貼りはなかなか美しく仕上げにくいし… せっかく撮影した写真たちが、展示中に色あせてしまって、 ベストの状態で見てもらえなくなるのも嫌だったしね。 本当は、ポラの魅力をフルに伝えるという意味では、 オリジナルのポラのフィルムの状態で展示するのが 一番良いとは思うんですよ。 ただ、上記の問題に加え、万が一、水濡れや落書きや、 何かトラブルが起こっても、 オリジナルを守ることということも、 作家として大切なことではないかなと思うわけです。 イベントに参加する他の方、主催者様、 もちろん、来てくださる皆様、そして僕。 全員がいらない心配をせず、写真展・イベントを成功させることに集中できるように、配慮したつもりです。 と、言うわけで、僕はオリジナルの展示をあきらめ、 出来るだけオリジナルに近いかたちでの複製を考えたのです。 絶対条件として、僕が決めたのが、『何も足さない、何も引かない。』 何やらウィスキーのCMみたいですが(笑) 写真を複製しようとするとき、加工しようとするとき、 もう少し色を鮮やかに、とか、 ここに写りこんでいるゴミを消してしまおう、とか、 ついつい何らかのいらない(いや、それは仕事では必要だったりするんですけどね) 手の加え方をしてしまいがちなんです。 でも、それは写したものがそのまま作品になるポラの本分から 外れてしまうだろ、と。 そこで、とにかく原版の色を、 やわらかなあのSX-70フィルムや600フィルムの写りを、 最大限の努力と技術で再現しようと決めたのです。 これが実は『半径2km』写真展開催にあたっての、一番大変な作業でした。 純粋な作業手順としては、 1.撮影した写真をスキャニングする 2.何度もテストプリントを繰り返しながら、原版の色や雰囲気を 忠実に再現する たったこれだけなのですが、 何しろ、最近のスキャナやプリンタと来たら出来が良すぎるもので、 どうもデジタルっぽい硬い表現になってしまって、 なかなかあの柔らかな雰囲気の再現が難しかったのです。 試行錯誤の繰り返し。全56枚もの写真に対する作業ですからね。 その作業には大変な時間がかかってしまいました。 でもまあ、結果的にここでじっくり時間をかけて煮詰めた作業は、 『半径2km』開催後の他の写真展展開にも非常に役に立ったので、 今思えば本当にたくさん悩んで、時間をかけてやっておいて良かったなと 思っていますけどね。 今回もずいぶん長くなってしまいました。 次回は引き続き展示方法のお話。 額装するかわりにどうしたのか、そして実際にどんなふうに展示したのかを お話させてもらおうと思っています。 これからまたぐっと寒くなる季節。 写真散歩にはつらい時期だけど、この時期特有の硬くも優しい光は とっても美しいものです。 体調を崩さないようにあったかくして、写真生活を楽しんでくださいね。 では、次回更新まで、ごきげんよう。 2007.11.30 Friday
|

Copyright (c) 2005 Hot-Air Balloon All right reserved.









